情報光学研究室
■研究内容
GI型ポリマー並列光導波路の作製法
プリフォーム法
これまでのポリマー光導波路は,SI型で矩形状のコアを有する構造が一般的であり,フォトリソグラフィーやインプリント技術など,半導体プロセスを応用した作製法により得られていました.特に高密度・高速光インターコネクションへの用途展開を目指す際には,コアサイズはより小さく,並列されるコア間距離(ピッチ)もそれに伴って縮小することが望まれてきています.一方で,光導波路や光源・受光器などの光デバイスを基板上へ実装する際のコストとの兼ね合いから,マルチモード導波路の注目度が高く,コアサイズは50um,ピッチとしては250umとする例が多いのが現状です.それでも,要求仕様の厳しいHigh Performance Computer用途になると,コアサイズは35um,ピッチとしては62.5umと,より高密度化が進められています.更なる高密度配線のために狭ピッチ化することは,隣接コア間のクロストークの増大に繋がることが懸念されます.これに対して,当研究室では,GI型プラスチック光ファイバ(POF)の作製工程に用いられているプリフォームの熱延伸行程を,光導波路作製プロセスに適用し,インターコネクションに重要な,
「より高密度配線」に適した『細径コア』,『微小ピッチ』を有するGI型ポリマー並列光導波路を実現しました. プリフォーム法によるGI型ポリマー並列光導波路は,ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を母材として作製しています. 4〜16(最大)本の並列コア部(チャネル部)には,高屈折率ドーパントの濃度勾配に基づく放物線状の屈折率分布を形成します.本法により,一例として5cm×25cm×1cmのサイズの板状のプリフォームを作製して,このプリフォームを熱延伸することで,薄い板状の導波路が100m以上得られます.作製時のコア形状,配列,ならびに加熱延伸する際の延伸比率を調整することで,導波路構造を自在に変えることができ,任意のコアサイズ,コア間ピッチを有する導波路を作製することが可能となります.



●アクリル系ポリマー並列光導波路は,板状のプリフォームを作製し,それを加熱・延伸することで作製しています.



ソフトリソグラフィ法
プリフォーム法を用いることにより,円形コア,矩形コアいずれについても,放物線状に近い屈折率分布を有するポリマー並列光導波の作製が可能となりました.1つのプリフォームから,数百mにも及ぶ導波路を一度に作製することが出来るため,プリフォーム法は.生産性に優れる手法であると言えます.しかしながら,当研究室では,このGI型ポリマー並列光導波路の応用展開として,ボードレベルの光インターコネクションを考えており,プリント基板上へポリマー光導波路を実装した,光配線板の実現を目指しています.その場合,プリフォーム法で作製されたポリマー光導波路は,光配線板に利用するためには,プリント基板上への精密実装が要求されます.生産効率の高い導波路作製法ではありますが,導波路の実装コストの問題が懸念されます.さらに,プリント基板上に実装された導波路については,はんだリフローなどに耐えうる高い耐熱性が要求されます.プリフォーム法は,3次元架橋性を有さない線形ポリマーを母材として用いることが必要です,そのため,出来る限り高耐熱性ポリマーを用いることが望まれますが,熱延伸温度を上げる必要が生じ,生産効率を下げてしまう可能性があります.プリフォーム法を用いる場合,得られるポリマー光導波路の耐熱性とのトレードオフが問題となると言えます.
 これら,基板への実装性,ポリマーの耐熱性の双方の問題を解決するには,直接基板上へ光導波路を作り込むことの出来る手法が必要であり,当研究室では,ソフトリソグラフィ法を用いて,GI型ポリマー並列光導波路を作製する手法を確立しました.ソフトリソグラフィ法(インプリント法)は,光導波路を低価格で製造する手法の一つとして,これまでにも,多くの提案がなされています.この手法を,GI型ポリマー並列光導波路作製に応用できれば,オンボード光インターコネクションへの応用展開が期待されます.導波路構成材料には,3次元架橋性を有するポリマーが利用出来るようになり,耐熱性の向上が期待されます.
 実際にソフトリソグラフィ法で作製された光導波路の断面写真では,コアとクラッドの境界が若干ぼやけた状態に見えており,屈折率のなだらかな勾配が形成されていることがわかります.一方で,露光条件を選択することにより,従来のSI型に近い屈折率分布の作製も可能となり,この場合は,断面写真上で,明確なコアークラッド界面が観測されます.GI型のポリマー並列光導波路からの出射光NFPは,プリフォーム法で作製されたGI型導波路と同様に,コア中心に光が閉じ込められている一方,SI型の導波路のNFPではコア全体に均一に出射光が広がっていることがわかります.
  

●アクリル系インプリント用材料(TPIRシリーズ)を用いて,ソフトリソグラフィ法でGI型ポリマー並列光導波路を作製するプロセス.

●ソフトリソグラフィ法で作製したGI型ポリマー並列光導波路の断面写真(a),(c) 及び,擬似SI型導波路(b).
露光条件を変えることで,GI型屈折率分布から,SI型に近い屈折率分布まで作りわけることができます.



●ソフトリソグラフィ法で作製したGI型ポリマー並列光導波路(上)とSI型近い屈折率分布うを有するポリマー並列光導波路からの
出射光強度分布(NFP) GI型導波路の場合には,コアの中心部に光が閉じ込められているのに対して,SI型に近い導波路では,コア全体
に均一な出射光強度分布となっています




●ソフトリソグラフィ法で作製したGI型ポリマー並列光導波路の屈折率分布


GI型導波路の作製法 GI型導波路の作製法
高速ポリマー
インターコネクト

フォトニック結晶POF CNT
フォトニクス
W-Shaped
POF
屈折率分布
制御
全フッ素化POF 研究内容
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© 2006 Takaaki Ishigure, DCP & Keio University