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■研究内容 |
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W-Shaped Waveguides & POF |
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当研究室では,2002年度,「W型屈折率分布」によるPOFの更なる高速化を提案し,実際に,このW型POFが上述のGI型POFの高速伝送性能を凌駕しうることを報告しました.W型屈折率分布とは,これまでに研究を進めてきた,GI型の屈折率に類似した屈折率分布形状です.GI型の屈折率分布はファイバの中心軸から周辺に向けて,コア部の屈折率が放物線状に減少し,その周囲を屈折率が均一のクラッドで覆った形状をしていました.これに対して,W型屈折率分布では,コア部とクラッド部の間に,下図に示すような屈折率の溝を有し,英語の「W」の文字に類似した形状となっています.近年では,このW型屈折率分布をポリマー並列光導波路中に形成し,優れた機能を発現する研究を進めています.具体的には,W型屈折率分布の導入により,並列コア間のクロストーク低減に着目しています.昨今,注目を集めているマルチコア・シングルモードファイバの構造についても,コア外周部に屈折率の低い層(トレンチ)を設けることでモード結合を低減し,クロストーク抑制の効果があることが発表されています.これに対して,当研究室で扱っているマルチモードの並列導波路に関しても,同様にクロストーク低減効果があることを,2007年に報告しました.
このW屈折率型分布型ポリマー並列光導波路は,プリフォーム法にて作製しており,W型コア部に全重水素化PMMA(PMMA-d8),クラッド部にPMMAを用いました.PMMAとPMMA-d8の屈折率が僅かに異なることを利用してくW型の屈折率分布を形成することに成功しました.しかしながら,この場合,屈折率の溝(トレンチ)の深さを自在に変えることが難しく,理想的なW型屈折率分布を実験的に確認することは困難でした.そこで,コア部・クラッド部に用いる材料を変えてW屈折率分布型ポリマー並列光導波路を作製する試み,ならびに光線追跡法による理論的な解析により理想の屈折率分布を明らかにする試みを進めてきました.
下図には,コア部にPMMAとドーパント,クラッド部にPMMAとPBzMAの共重合体を用いることにより作製したW屈折率分布型ポリマー並列光導波路のコア部断面写真を,GI型コアポリマー並列光導波路のそれと比較して示しています.
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●W型,GI型屈折率分布導波路の構造.
●W型,GI型屈折率分布導波路の断面写真(上)と干渉顕微鏡による干渉縞測定写真(下).
W-屈折率分布型導波路のコア部には,外周に暗い線が確認できます.屈折率の溝部には,光が伝搬されていないことがわかります.
●W型,GI型屈折率分布導波路のクロストーク評価結果.左から2番目のコアに信号光を結合し
1m伝搬後、隣接コアからの出射光強度と比較することでクロストークを算出します.10dBものクロストークの低減
が確認されました。
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●光線追跡によるSIコア,GIコア,W型コア導波路中の信号光伝搬の様子とクロストーク.
水色の光線は,コア内の散乱点により散乱された信号光を示しています。SIコアでは,散乱光は、クラッド部に漏れやすく
隣接コアに結合し(クロストーク)ていますが,W型コアの場合には,屈折率の溝の影響で,散乱光はクラッド部から隣接コアへの
結合が生じにくく、その結果クロストークが生じにくいということが確認できます.
●光線追跡によるSIコア,GIコア,W型コア導波路中のとクロストーク.
左半分は,散乱損失の大きい導波路,右半分は散乱損失の低い導波路を想定して計算.
散乱された信号光が,クラッド部に漏れ,隣接コアに結合していく様子が確認できますが,
W型コアの場合は,屈折率の溝の効果により隣接コアへの結合光が低減されています.
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